大学改革とサービス・ラーニング

2007年 11月 07日

■ 「何を教えるか」から「何をできるようにするか」へ
 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の大学分科会小委員会が910日、大学卒業までに学生が最低限身に着けなければならない能力を「学士力」と定義し、具体的に示すことは決定しました。
えり好みさえしなければ誰でも大学に入れる「大学全入時代」の到来を控え、「大卒者(学士)」の質を維持するのが狙いです。各大学に対しても、安易に学生を卒業させることのないよう、卒業認定試験の実施など、厳格なチェックを求めています。

 つまり、大学が「象牙の塔」として社会から超然としていられた時代は終わり、大学の「商品」である卒業生の質が問われるようになってきており(出口管理の強化)、大学側にもアカウンタビリティ(説明責任)が求められるようになって来ましたわけです。

 

■ ラーニング・アウトカムの明確化が必要
 929日に沖縄国際大学で、大学教育における海外体験学習研究会の第6回研究大会(テーマ:「海外体験学習の教育効果とその評価」)というフォーラムが開催されましたが、そこでも「ラーニング・アウトカム(学習成果)」が一つのキーワードになりました。

 海外でのボランティア活動を含むプログラム(SERVICE FOR PEACEのワークキャンプのようなもの)も、そのプログラムで学生が何を学んだのかを言葉とロジックで適切に評価しないといけないという指摘がありました。「感動した」「学生が大人になった、一皮向けた」という感覚的な評価ではダメだということです。
 そうしないと、このようなサービス・ラーニング的なプログラムは学内において「一部の好きな人がやっている」という評価しか得られず(事実、ほとんど大学においてはそうなっています)、大学の応援やバックアップが得られず、その継続性が担保できなくなります。

 

■ プログラムの制度化とあくなきダイナミズムの追求
 従来の知識伝達型だけの大学教育では、社会のニーズに合った人材を育成することは難しく、体験というコンポーネント(要素)を入れた新しいプログラムが求められています。

 しかしその一方で、旧態依然とした固陋なアカデミズム信奉者が多いのも事実です。
 

 その中で、サービス・ラーニング的なプログラムを広げていくためには、ラーニング・アウトカムを客観的・重層的に明示できる評価手法を確立するとともに、過度に制度化することによって、体験の持つダイナミズムを失わないようにバランスを取ることが必要になると言えるでしょう。

 

 

 今回の素案に示された「学士力」は、「知識」「技能」「態度」「創造的思考力」の4分野13項目。

【具体的な項目】

■知識
・異文化の理解(外国などの文化を理解する)
・社会情勢や自然、文化への理解(人類の文化や社会情勢などを理解する)

■技能
・コミュニケーション能力(日本語、特定の外国語で読み、書き、聞き、話すことが出来る)
・情報活用力(インターネットなどの多様な情報を適切に使い、活用できる)
・論理的思考力(情報や知識を分析、表現できる)

■態度
・チームワーク、リーダーシップ(他者と協力して行動したり、目標実現のために方向性を示せる)
・倫理観(自分の良心や社会のルールに従って、行動できる)
・生涯学習力(卒業後も自ら学習できる)

■創造的思考力
 知識、技能、態度を総合的に活用し、問題を解決することができる

 

 もちろん、学士力の導入に対しては、文部科学省が大学の学習指導要領を作ろうとしているといった批判もあるのも事実です。また、そもそも大学の数自体が多すぎるのであり、淘汰は当然といった議論もあります。

 

 【参考】日本経済新聞2006327日付より

   大学の多様化が進むに連れて、大学間の学位水準のバラツキが問題になっている。川嶋太津夫・神戸大学教授は、学位が証明する能力・資質を「ラーニング・アウトカム」によって全国一律に明確化することで、高等教育の透明性を高め、日本の学位を国際的に通用するものにすべきであると指摘している。

 ラーニング・アウトカムとは、一つの学習活動の終わりに、学生は、何を知っているべきか、何を理解すべきか、何ができるかを明示したものである。参考になるのは、現在、欧州諸国が取り組んでいる「ボローニャ・プロセス」。他方、ラーニング・アウトカムの発想は、教員がどのように教えたのかではなく、学生がどれだけ学んだかに注目することを意味しているので、教員中心に進められてきたこれまでの高等教育のあり方を学生本位の教育に変革できる契機ともなりえるのである。

コメント一覧


新規コメント (名前と本文は必ず入力してください。)

※コメントは承認後に公開されます。

Profile

Calendar

May 2012
SMTWTFS
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031 

Link

Entry Archive

Recent Entry

特定非営利活動法人SERVICE FOR PEACE