S-1バトルの功罪―適正な賞金金額とは?

2010年 05月 05日

 みなさんは、少し前にS-1バトルというお笑いの大会があったのを知っていますか?

 

 

 これはソフトバンクが主催した大会で、お笑い芸人が自分のネタを動画に収めてアップし、それを見たソフトバンクユーザーが投票してチャンピオンを決めるというもので、グランドチャンピオン大会はゴールデンでテレビ放映もされました。

 今人気の多くのお笑い芸人が参加したのですが、何よりも話題となったのはその賞金額の大きさでした。

 

 グランドチャンピオンには1億円が授与されるというだけでなく、月ごとの決勝で最も得票集めた「月間チャンピオン」にもそれぞれ1,000万円が贈られました。
 合計の賞金金額は何と22,000万円!

 

 お笑いの三大タイトルといわれる「M-1」「R-1」「キング・オブ・コント」の賞金がそれぞれ、1,000万円、500万円、1,000万円ですから、いかに破格の金額かがわかります。

 

 

 さてそこまでの出資をして、はたしてちゃんと元が取れるのかといえば、そこは抜け目ないソフトバンクのことですから、ちゃんと計算の上のことだと思います。

 

 ソフトバンクの戦略の意図は明らかで、これを通じて広告宣伝効果と『パケ放題』の契約者数の増加を狙ったのです。

 確かに、著名人を起用してCMや広告をバンバン打てば、すぐに2億というお金はかかってしまいますから、これだけ多くのお笑い芸人が参加して話題になったことは、投資額以上の効果があったことでしょう。

 

 

 しかし一方で、当初ソフトバンクが想定していなかったであろう誤算もありました。

 

 それは、賞金額の大きさに対する批判が一般の人のみならず、お笑いファンからも噴出していることです。

 その多くは「かけた努力に合わない過剰な賞金である」というものです。

 私自身も優勝した動画をいくつか見てみましたが、イタズラやドッキリを仕掛けたり、普通にネタを動画で撮影したりと、「これで1,000万円?(ましてや1億円?)」と思うものがほとんどでした。

 

 

 たった3分の、しかもクオリティもそれほど高くないこれらの動画の価値が1,000万円だと思うと、正直高すぎる気がします(これをCM出演料と考えることもできますが、それでもやはり高すぎます)。
 出場者の金銭感覚を麻痺させてしまうのではないかと、よけいな心配すらしてしまいます。

 

 

 そして何よりも、他の大会との賞金バランスを破壊してしまったことも、ファンの反感を買っているゆえんです。
 一生懸命ネタを練習して、厳しい予選をいくつも勝ち抜かなければならない大会と、ちょっと工夫して動画を取るだけで得られる賞金の額が同じなのです。

 

 確かにこのS-1戦略によってソフトバンクのメディア露出はさらに増大し、『パケ放題』の契約者数も増えたかもしれません。
しかし、それがイメージアップにつながったかどうかは疑問です。

 

 ネット上にはソフトバンクの企業体質に対する批判も多く出されており、もしかしたらこれによってソフトバンクは、「戦術に勝利」して「戦略に負け」てしまったのかもしれません。

 

 

 さて、そんなことを考えていたら、ちょうど今日テレビで『欽ちゃんの仮装大賞』をやっていました。

 今年で84回目となるこの大会の優勝賞金は、昔からほとんど変わらず100万円です(※一時期200万円にアップした時もあります)。

 

 これだけ有名な大会でしかも取得難易度が高いことを考えたら、ちょっと安すぎるような気がしますが、この賞金額の設定にこそ、この大会の人気の秘密があるように思います。

 

 それは、参加者のほとんどは賞金を目的に参加しているのではなく、「みんなで作りあげる喜び」や「苦労してやり遂げた達成感」を味わうために参加しているということです。

だから、たとえ賞を取っても赤字が出るような金額であったとしても、毎回これだけ多くの人が競って参加するのでしょう。

 

 労働価値説ではありませんが、やはり賞金の額というのは、それを手に入れるのに必要な労力や技術、そして難易度に比例して適切に設定するべきでしょう。

 

 

 ソフトバンクもさすがにこうした批判の声を受け、今年の大会では大きくシステムを変えてきましたが、はたしてこの大会をいつまで続けられることか。
 物の価値比較に慣れた今の一般消費者やお笑いファンたちの眼を、決して過小評価しない方がいいでしょう。(Arthur

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