ナンバー1よりナンバー3 ―緊急事態の価値判断―
2009年 03月 04日
企業のマーケティング調査はもちろん、開発事業においても必要とされているのは“即効性のある調査”であることは間違いないだろう。
ありきたりな常識ではあるが、これは実際に事業者側になって始めてわかるものだ。
現場にとって必要なの情報は、数々の数字のマジックによって彩りを加えられた、長くて綺麗で、それでいてよく意味の判らないデータではない。
今、私たちに必要なのは速攻で手に入る、7割程度信用できる、雑でもシンプルで判りやすくまとめられたデータだ。
“ナンバー1よりナンバー3”。
この合言葉が生まれたのは今よりも半世紀以上前のイギリス。歴史に名高いバトル・オブ・ブリテンの航空戦だ。
ヨーロッパの覇権をほぼ掌握したヒトラーが、自由主義最後の砦であるイギリスを打ち破るのはほぼ時間の問題だと思われていた1940年代初頭。
チャーチルの率いるイギリスは、昼夜問わずロンドン上空に襲い掛かってくるナチスドイツの空軍から、なんとしても本土を守らなければならなかった。
空の戦いで優位性を保っておけば輸送艦隊をイギリス本土に近づけることなく、ヒトラーの牙城である平野戦にはならない。物量において圧倒的不利に立たされたイギリスは空軍に力を注ぎ、ドイツの空の武器をイギリスの空でへし折る事を決意する。ドイツとイギリスの決戦は、実質制空権争いだった。
この時、イギリスの科学者には、極めて実践的で実戦的な研究が課されていた。
“数百キロ先のナチス空軍を即座に探知できるレーダーを作れ”
イギリスのレーダー開発者たちの中で叫ばれた合言葉がまさに、“ナンバー1よりナンバー3”だったのだ。
完璧でなくて良い。8割信用できる品質であれば良い。迅速で、必要な情報をキャッチしてくれるレーダーが必要だった。それは、時間とお金がかかる完璧な品質でなくても良かったのだ。
実際に、この即席レーダーはたしかに問題があり、探知から漏れたナチス空軍は幾度と無くロンドン上空を脅かし、レーダーは幾度も破壊されたという。
それでも、ほぼ8割のナチス機はイギリス上空に迫る数時間前には探知され、イギリス本土に迫る前には迎撃部隊は出動できた。
また、自国上空で戦うイギリス空軍にとって地の利も良く、撃墜されたパイロットは脱出することで高い生存率を誇った。パイロットという人的資源の面で、イギリスは少しずつ有意に立ち始めた。
襲撃の度に改良を加えられたレーダーは着実に性能を上げてゆき、着実にナチス空軍を捉えるようになっていった。そして、ついにヒトラーはブリテンをその手中に治める事を断念する。
この頃より、ナチスドイツの覇権は少しずつ揺らぎ始めていった。
ナンバー1よりナンバー3。
この教訓から学ぶことは多く、これは私たち現代の事業戦略においても十分に適用できる事ではないだろうか。
緊急時において必要なのは、格式ばった情報ではなく、今すぐ使えるデータだ。
