資本主義の限界と新しい道(ユヌス氏の提案)
2009年 02月 24日
少し前のことになりますが、朝日新聞にムハマド・ユヌス氏のインタビューが掲載されていました。私も読んでとても感銘を受けましたので、今回はこの内容を紹介したいと思います。
みなさんよくご存知だと思いますが、ユヌス氏は世にマイクロ・クレジットの可能性を知らしめたグラミン銀行の総裁で、2006年にノーベル平和賞を受賞された方です。
インタビューは主に昨今の世界的金融危機に関してなされたものですが、ユヌス氏は次のように語っています。
「自由主義は良いことだ。でも、私たちは市場を誤って使っている。金融制度をただす前に、それを生んだ資本主義をただすべきだ。私たちは資本主義を誤って解釈している。ビジネスとは金もうけのことで、利益の最大化がその使命と言う。この解釈は人間を金もうけの機械とみなす。誤った解釈だと思う」
現代の資本主義の誤りと今の金融危機の原因は、すべてを利益で換算するシステムを作ってしまったことだというのです。
続けて、次のようにも語っています。
「すべての人間には利己的な面と、無私で献身的な面がある。私たちは利己的な部分だけに基づいて、ビジネスの世界を作った。無私の部分も市場に持ち込めば、資本主義は完成する」
では、ここでユヌス氏が言っている、本来市場に持ち込むべき“無私の部分”とはいったい何なのでしょうか?
それをユヌス氏は、「ソーシャル・ビジネス(社会的企業)」と呼んでいます。
ソーシャル・ビジネスは形式的には一般の企業と同じですが、目的は社会問題の解決にあり、利益を最大化させることではありません。たとえば、貧困国で食料や水などを販売しますが、それは貧困を解消するためであって、利益をあげて株主を満足させるためではないのです。そのため、顧客には事業を維持できる最低限の安価で商品を提供するのです。
これは、今日本でもちょっとしたブームになっている「社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)」とほぼ同じ考えです。
ただ、ユヌス氏はこの考えをさらに発展させて、株式市場にもこの原理を持ち込むことを提唱しています。これは「社会的株式市場(Social Stock Exchange)」と呼ばれる考え方です。
この市場では従来の株式市場と同じように、投資家は自分の応援したいソーシャル・ビジネスに投資します。起業家は投資家から集まったお金で社会的事業を展開し、事業が軌道に乗ってきたら元本を返済します。ただし、配当は一切分配しません。投資家に還元されるのは元本のみで、企業があげた利益はさらなるビジネスの拡大による社会問題の解決のために使われるのです。
では、投資家はいったい何の得があって投資するのかといえば、「社会問題の解決に貢献したという満足感」を得るために投資するというのです。
この考え方に対して、インタビューアーも「配当なしで、投資家の関心が集まるでしょうか?」と、率直な疑問を投げかけています。
まさにこれは、人間の“無私の部分”、つまり良心的な部分を信じることで始めて成立するシステムです。
確かに、実現への道は簡単ではないでしょう。
しかし、世界的に近代資本主義の限界が叫ばれている今、私たちが次に目指すべき社会システムは、まさにこうした人間の良心的な部分によって成立するシステムではないでしょうか?
だれもが、そんな社会ができたらいいなと思っているはずです。
それなら、実際に可能なのではないかと思いませんか?
実現に向かって動く、志ある少数の人たちがいるかぎり。
